日本RF手術研究会ジャーナル Vol.14 No.1

サージトロン針状電極(A2D・A8D)を用いた若年女性の外陰部手術
辻 芳之(神戸アドベンチスト病院 産婦人科)

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サージトロン針状電極(A2D・A8D)を用いた若年女性の外陰部手術

辻 芳之(神戸アドベンチスト病院 産婦人科)

初めに

処女膜強靭による性交障害、尖圭コンジローマ、バルトリン腺嚢胞、粉瘤種、小陰唇の形成希望など女性の外陰部で小手術を行わねばならない場合がある。
特に若い女性の外性器については羞恥心に配慮するとともに、できる限り短期間で治療を終了し、また術後の性生活が影響するような痛みや引きつり、瘢痕などが残ってはならない。すなわち顔面に対して行う手術のような配慮を必要とする。
このような条件を満たすため低侵襲で組織に対する損傷がなく、引きつりや、縫合、止血の必要がない切開装置が求められる。ラジオ波手術は高周波メスでありながらシャープな切開ができ、組織への熱損傷が非常に少ないことと出血が少ないことに着目した。これを用いることと、サージトロンでは極めて細い針状電極を用いて細密なフェザータッチ手術ができることに注目し、女性の外陰部手術に応用することを試みた。

対象患者と材料と方法

手術器具
本体はサージトロンpelleveS5を使用し、リユーザブルのアンテナ型対極板は手術台で患者の衣服の上から接触させた。
メス先電極にはサージトロン針状電極(A2D)を用いた(図1)
サージトロン針状電極(A2D)
図1
出力はサージトロン出力調整目盛り10%とし、主に切開モードのみを使用した。
患者はいずれも20-40歳代の処女膜強靭による性交障害、小陰唇の形成希望、外因粉瘤などの患者を対象とした症例を報告する。

症例1

処女膜強靭症 患者は20歳代結婚後数年に至るが痛くて性交ができないことを訴え来院。
婦人科的診察で、膣口は狭く破たんしていない処女膜が膣入り口を固く囲み膣入口部口径は1cm以下で小指1本も入らない状態であり、また、膣口に指が触れただけでも強い痛みを訴え、性交について心理的負担が強い状態であった。
処女膜強靭症とそれに伴う心的なダメージがあると診断、処女膜輪状切開を勧めたが手術や縫合、抜糸に対する恐怖感が強かった。そのために、心のケアに努め手術の不安を払拭する工夫を行うこととし、サージトロン針状電極の手術は触れるだけで出血がなく切開ができ術後の疼痛もなく術後通院の必要もないことを説明したところ手術に同意。患者の不安が強いために全身麻酔で行った。サージトロン針状電極(A2D)を使用し、サージトロン出力は10に設定、処女膜の根元の膣粘膜に50万倍アドレナリンを注射し、針状電極で軽く触れるだけで処女膜を膣壁から切り取る事ができた。(図2)
図2
サージトロン針状電極(A2D・A8D)を用いた若年女性の外陰部手術図2
この処置では出血もなく、クスコー膣鏡のMサイズが抵抗なく挿入できるようになり、縫合止血は必要なかった。術後疼痛はなく術後2週間後の診察で痛みなく内診ができ、膣壁の瘢痕も引きつりもなく見られなかった。その後、夫婦生活も順調にされている。
(強靭処女膜切開手術)

症例2

外陰部小陰唇の形が気になる。患者は30歳代(未婚)、自分の右小陰唇に小さな壁のようなものがあるのが非常にきになり積極的になれないためにこれを切除してほしいとの希望であるが、他院では対応してくれないとして受診。診察すると右小陰唇に小さな突起があり、本来の小陰唇の形に含まれるもので医学的には問題ないと判断したが強く切除を希望した。性器の形が気になっている訴えであり、術後の引きつりや痛みなどが発生した時に、さらに別の愁訴を発生する可能性があると思われた。そこで、術後の痛みや引きつりによる変形などが発生しないサージトロン針状電極を用いて突起部分の切除を行った。(図3)
図3
サージトロン針状電極(A2D・A8D)を用いた若年女性の外陰部手術図3
小陰唇にキシロカイン麻酔を行い、サージトロン針状電極を用いて出力10で切除した。出血、疼痛なく、小陰唇は自然な形で満足されている。ただし性交に影響しないように、さらに後の通院もできる限りしたくないと希望。
(小陰唇形成手術)

症例3

外陰粉瘤 患者は40歳代、数年前から右大陰唇に囲い硬結に気が付いていたが、だんだんと大きくなり、最近人差し指の先ほどの大きさになってきて痛むとのことで受診。
診察により右大陰唇に2cm大の粉瘤が発生していることが判明、外陰部にできた大きな粉瘤であることを考慮しサージトロン針状電極を用いることにした。
サージトロン針状電極は真皮下に入らず、粉瘤の内壁皮膚組織を1mm以下の深さで薄く削り取ることができる。脊髄麻酔のもとに針状電極、出力10で粉瘤表面から長さ1cm、深さ1mm程度の薄い切開を入れ粉瘤の内壁に入り、これをフェザータッチで薄く剥がすように完全に切除した。(図4)
図4
サージトロン針状電極(A2D・A8D)を用いた若年女性の外陰部手術図4
真皮下に切開が至っていないので全く出血もなく摘出部の創部の内面は理論的に真皮であるので縫合も必要なくテープで寄せるだけであったが、2週間後には跡形もなく治癒していた。
(外陰粉瘤摘出術)

考察

サージトロンは非常にシャープな切開ができるが、コールドメスと同様に組織への熱損傷がない。また切開創の微小血管に対する止血効果も高いので耳鼻科、皮膚科、美容形成外科などで広く使われている。特にサージトロンと針状電極を組み合わせた手術はフェザータッチで切開ができ、そのため極めて精密な手術ができる。
一方、女性の外陰部は小手術はデリケートな場所であり術後の疼痛や瘢痕、引きつれなどはその後の性生活に影響し、心理的な後遺症が発生することもある。特に症例1や症例2については症状の裏には心理的な要素が深く潜在していると思われ、手術侵襲は最小限度としなければならない。また症例3では外陰部の粉瘤に対して真皮下に切開が入ることなく粉瘤の内壁皮膚を削り取るような極めて精密な手術を行うことができた。
これにより大きな粉瘤でありながら縫合も必要なく、痛みもなく、跡形もない治療に成功している。
女性の外陰部は顔面のように常に露出している部分ではないが、若い女性の性生活などを含め、美容形成外科に似た要望や需要のあるところであり、婦人科の小手術処置においても非常に細かい心配りが必要でもある。また今後顔面の美容形成に似た要望が増えてくることも考えられる。そのことからもサージトロン針状電極を用いた手術は今後も検討されるべきであろう。

コンテンツ -contents-

サージトロン針状電極(A2D・A8D)を用いた若年女性の外陰部手術
辻 芳之(神戸アドベンチスト病院 産婦人科)
小児外科領域におけるRFナイフの使用経験
佐々木 隆士(近畿大学医学部外科学教室小児外科部門、兵庫医科大学外科学小児外科)
30年のRF経験における眼瞼手術と臨床
Prof. Dr. Reynaldo Javate(University of Santo Tomas Hospital Eye Institude)
経結膜ミュラー筋短縮術からの変遷
矢部 比呂夫(水道橋クリニック 眼科)
保険診療における上眼瞼手術のエステティックマインド
村上 正洋(日本医科大学武蔵小杉病院 眼科・眼形成外科)
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小西 和人(芦屋美容クリニック)
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