日本RF手術研究会ジャーナル Vol.13 No.2

海外文献1:RF手術の原理と多様性
(The Consulting Roomより)

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海外文献1:RF手術の原理と多様性

“RadioSurgery background information” Case studies provided courtesy of Dr. Patrick Treacy
高周波/RF(ラジオ波)手術の背景として、”Radiosurgery”という言葉は医学の分野では2つの異なる外科治療を指しており、時として混乱を招くことがあります。そこで、今回は”Radiosurgery”のもつ二つの治療方法の違いについて解説します。
まず1つ目の”Radiosurgery”は、ガンマ線のように電離放射線を直接照射し、血管奇形や良性・悪性疾患を非侵襲的に治療する「定位的放射線療法(STRT)」で、脳腫瘍の放射線治療のために1949年にスウェーデンで改札されました。
もう一方の”Radiosurgery”は、「RF(高周波)手術」を意味し、高周波電流で組織を切開する方法です。この外科治療は、テンションをかけることなく切開と凝固を同時に行なうことができ、従来の電気手術や電気焼灼術とはまったく異なります。
今までの電気手術器は、電流が患者様の体を通り、電極の先端部が抵抗となるため、高温になった先端部が切開創の周辺組織に過剰なダメージを与えます。また神経末端部が塞がっていないことによる術後の疼痛、電気ショックや火傷も起こりうるリスクにあげられます。
対してRF(高周波)手術の原理は、電極を通して低い温度が伝わるように、海洋無線に近い周波数帯の4MHzの高周波を使用しており、電極ではなく組織が抵抗となります。そして電極先端部から病変に流れたRF(高周波)は対極板で回収され、RFメス本体へと戻っていきます。
その際、電極先端部にRF(高周波)が集中することでエネルギーが放出され、細胞内で発生した蒸気が蒸発し組織を切開していきます。つまり細胞内の水分が熱せられ、細胞内の圧力が高くなり、破断点に達した細胞が内側から破裂する細胞蒸気爆発が起こります。
そのため、低温のRFエネルギーにより電極が熱くなることがなく、細胞内組織の水分が抵抗となり、電気手術で発生するような熱やダメージなく蒸発し、組織も焦げることなく十分に止血できます。さらに患者様に電気ショックや火傷の心配がなく、周辺組織へのダメージや術後の疼通、出血も最低限に抑え、早期治癒が見込めます。

はじめに

LEEP(large loop excision procedure)法を中心に子宮頸部円錐切除術におけるラジオサージェリーの手技を解説する。

手術操作

1. 前処置
必ず術前のコルポスコピーで移行帯を確認し、病巣の広さに応じたサイズのループ電極【図1】を選択しておく。局所麻酔または腰椎麻酔下で砕石位をとり、子宮頸部の4時8時方向に吸収糸をかけ、移行帯がちょうど正面を向くよう固定する。希釈した血管収縮剤を切除予定範囲の表面が蒼白になるまで十分浸潤させる。切開の直前に生食で湿らせたガーゼと通電した電極を接触させ、生食が蒸発する程度に出力を調節する。また、このときにハンドピースと電極の接続にゆるみがないか再度確認しておく。
2. 切開(ループ電極)
まず混合モード(切開および凝固特性)で電極に通電させたのち、縦方向もしくは横方向に電極を垂直に接触させ、組織をすくい取るようゆっくりループを移動させる。切除は一度の操作で終了できる。途中で電極が進まなくなった場合は、対側から同様に切除をやり直す。必要であれば追加の切除を行う。
3. 切開(ボックス電極)
頸管側の追加切除が必要な場合はボックス型の電極でも可能である【図1】。子宮腟部が萎縮し、ループ電極による操作が不可能な場合にも、ボックス型電極での生検が有用な場合がある。
4. 止血
oozingがない場合でも血管収縮剤により一時的に止血している可能性があるので、ボール型電極【図1】により凝固モードで切断面の止血処置を行う。電極をピンポイントで接触させながら組織を炭化させないように凝固する。
5. 切開(バリチップ電極)
病巣が広い場合にはループ型電極の代わりにバリチップ電極(針電極)【図2】を用いて円錐状に切開すればcold knife法やレーザー法と同様の切除標本が得られる【図3】。間質組織を過剰に切除してしまわないよう表皮を一枚剥ぐ感覚で切開する。電線状の電極は繊細で損傷しやすいためディスポ電極が取り扱いには便利である。
【図1】婦人科用リープ電極

合併症

術後の合併症はcold knife法などと同様に出血、感染、頸管狭窄などがある。とくに止血が必要な術後出血は、ボール電極により外来での処置が可能である【図4】。

おわりに

高周波発生装置による円錐切除の手技に習熟しておけば電極のバリエーションの多様性(帆型レーツ電極の登場など)により、今後も様々な症例に対応できると考える。
【図2】バリチップ電極 A8D
【図3】バリチップ電極で切除した組織、【図4】バリチップ電極による円錐切除後10日目、2時方向からの拍動性出血をボール電極で止血

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※元資料に基づき、敬称略にて表示しています。
 
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