日本RF手術研究会ジャーナル Vol.13 No.1

バイポーラシザーズの使用事例
加藤 友康(国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科)

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バイポーラシザーズの使用事例

加藤 友康(国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科)

はじめに

バイポーラシザーズの使用については、2004年の当研究会にて、「バイポーラシザーズとサージトロンIEC-3とのコラボレーション」というタイトルで発表しました。今回はそれぞれデバイスとパワージェネレーターを変えて報告致します。
この写真は一般的な電気メスでの凝固シーンです。電気メスの場合どうしてもこのように炭化します。摘出標本でも黒く残り、写真の写り映えが悪くなります。

電気メスでの凝固
そこで炭化の小さいエルマンのサージトロンデュアル(DualEMC)を使用しました。次のスライドはサージトロンと一般的な電気メスのバイポーラ周波数の違いを示しています。上が電気メス、周波数は0.5MHzで、サージトロンデュアルのバイポーラの周波数は1.7MHzです。1秒間に電気メスの場合は50万回の継続波形であります。一方、サージトロンデュアルは170万回、波形は先ほど整形外科の先生がお話しされていたターボモードと同じ連続波形であります。このように波形が両者間で違います。出力を調整すると波形の高さが変わりますが周波数には変化がありません。まとめると、電気メスでは波が粗い、組織抵抗力が大きい、高い出力が必要、発熱量が高く組織が炭化する。一方サージトロンは波が細かく、組織抵抗が小さく、低い出力で発熱量が低く組織の炭化を抑えるという利点があります。

サージトロンと電気メスのバイポーラ周波数の違い

ビデオ供覧

これからは剥離、切離、止血、血管処理についてのビデオを供覧します。バイポーラシザーズは挟んだ所だけが通電します。シャープな切開、焦げ目のない凝固をご覧いただけます。

剥離操作

これは左の後腹膜腔を展開しているところです。サージトロンデュアルの設定はバイポーラモード、出力は15です。
バイポーラシザーズを通電しながら、組織を剥離、切離して展開していきます。ここは腹膜を薄く切って卵巣動静脈を露出させているところです。
手ははさみとしての操作だけに集中させて、凝固のスイッチはフットスイッチで行っています。出力は15ですが、適正な出力には個体差がありますので、場面によって出力を変えていくと良いと思います。

切離操作

切離に移ります。卵巣動静脈を鉗子で摘んでその間を切っていきます。はさみで切ると血液が下に溜まりますが、バイポーラシザーズを使うと、鉗子の間にたまっている血液が凝固されるので、術野に血液が溜まりません。特に注目していただきたいのが切離後の止血の良さです。
冒頭に子宮の周りが黒焦げになっている写真をお見せしました。子宮動静脈を鉗子で摘んで、鉗子と子宮の間を切離していきますが、子宮側のむき出しになった切離部分からの逆流性の出血がありません。止血する必要がないので、切開を行うときに好都合です。
次はリンパ節生検のシーンです。外腸骨動脈にあるリンパ節を生検しています。バイポーラシザーズの裏側は絶縁となっていて通電しません。血管に固着しているリンパ節でも血管にバイポーラシザーズを接触させながら切除することができます。

止血操作

止血の場面では、バイポーラシザーズの刃先を少し広げて通電時間を長くすることで、ちょっとした出血はこのようにして止めることができます。細い血管であれば、このようにはさみで撫でるような感じで凝固していくと止血されます。太い血管からの出血には太刀打ちできないので、鉗子で把持して止血することが必要になります。

血管処理

血管を見つけて血管の全体をはさみの刃先を少し開いてスライドさせて約1cmくらい凝固させて切開します。
また、子宮円靭帯にも表面には細い静脈が走っていますので、先にそれを十分凝固止血して切断します。

まとめ

今回用いたバイポーラはエルマン製のものでした。エチコン製バイポーラシザーズとの違いは電極コードの差し込み口が一つであることです。コードが2本から1本になることで、コードの絡みつきがなくなり、取り回しが楽になりました。
このエルマン製バイポーラシザーズは、アメリカでは獣医限定に認可されています。今回、人の手術に使用したのは、米国でも例がなく日本発、世界初とのことです。ちなみに日本の薬事の認可はバイポーラシザーズとして、平成21年に取っております。
動画で供覧しましたように、バイポーラシザーズとサージトロンデュアルを組み合わせて使うことでシャープな焦げ目のない切開が得られます。有効な場面の一つとして、リンパ節郭清が挙げられます。なかでも転移リンパ節が静脈と固着しているときに威力を発揮するものと考えられます。電気メスでは血管に近寄れず、メッチェン剪刀では切離面からの出血が避けられません。このようなときに、バイポーラの刃先を少し開いて刃先の裏側が通電しないという信頼関係のもとに、リンパ節と血管との隙間に入り静脈外膜を慎重に露出させていきます。1.7MHzによるシャープな切開がこのような剥離を可能にしてくれます。

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※元資料に基づき、敬称略にて表示しています。
 
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