日本RF手術研究会ジャーナル Vol.13 No.1

湘南鎌倉総合病院での円錐切除術の変遷:産婦人科領域の高周波ラジオ波メスの使用
井上 裕美(湘南鎌倉総合病院 産婦人科)

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湘南鎌倉総合病院での円錐切除術の変遷:産婦人科領域の高周波ラジオ波メスの使用

井上 裕美(湘南鎌倉総合病院 産婦人科)

はじめに

私が1980年に医学部を卒業した頃には、円錐切除術と言えば、メスによるSturmdorf手術(Cold Knife Conization)が主流でした。
そしてレーザー手術が始まり、次にLEEP(Loop electrosurgical excision procedure)が始まった時、我々はこの不思議な器具にとりこになりました。

「湘南鎌倉総合病院」の円錐切除術の変遷

変遷の鍵となったものは、その時代に流れ始めていた、医療の患者へ対する低侵襲性でした。
患者が早く治りたい、早く家に帰って自由に生活したい、そして早く社会復帰をしたい等、ごく当たり前のような患者の気持ちを理解し、それに応える医療従事者側の動きは、時代の流れの中で、短期滞在手術や日帰り手術を婦人科領域の外科治療の選択の一つへと発展させて行きました。
そしてLEEP法の出現はまさに時を得たと言わざるを得ません。
1988年の「湘南鎌倉総合病院」が開院して4年目、1992年4月から今までのメスによる円錐切除術はレーザー(Laser conization)による方法へと変わって行きました。当院での初めてのレーザーの円錐切除術が始まった、1992年の夏、時を同じくして、腹腔鏡下手術が始まりました。レーザー手術や腹腔鏡下手術が始まった、1992年から1995年にかけて、当院での北米の日帰り手術センターに研修が行なわれました。早く家に帰りたいというだけではない、時代の様々な因子が日帰りセンター開設を後押ししました。

日帰り手術への道

1900年初頭、小児外科の患者のケアは病院より両親と一緒の環境でのケアの方が良いとの考え(医療の質)であり、入院費を払えない患者へのニーズ(個人の経済)、医療経済の破綻(国の経済的な問題)、また医療技術の進歩などが日帰り手術を後押ししたものと考えられます。

日帰りセンターの患者さんの適応として、米国麻酔学会(ASA)の分類の中の①基礎疾患がない②軽度基礎疾患があるヘルシーペイシェント(healthy patient、健康な患者という概念)であり、実際円錐切除をうける患者さんのほとんどはその2点に当てはまることが分かりました。
ヘルシーペイシェント(healty patient、健康な患者という概念)
そして、1995年5月日帰り手術の前段階として初めての婦人科腹腔鏡下手術患者の日帰り手術の試みが始まりました。1996年10月、院内の日帰りセンターを開設し、1998年LEEPという手術を開始しました。
日帰り出来る患者さんの条件としては、次のスライドのように考えています。
日帰りできる患者さんの条件
円錐切除術としてのLEEP法について、手術の達成度(成功率)は95%と言われており、このことが円錐切除術の日帰りを加速させました。
実際、入院日数については日帰りの方々が2004年から2009年にかけての統計では90%ほどという結果となっています。
LEEP法手術入院日数

日帰り手術としてのLEEPの実際

患部に糸をかけてサージトロンデュアルを用いてリープ電極で切除します。だいたいBLENDモード35くらいで使用していますが、切れ味が悪いようならCUTモードだけで切除しています。その後ボール電極で止血をし、だいたい20分くらいの手術です。

頸管が閉じることが意外な合併症であるので、頸管閉塞の予防のためにネラトンチューブを留置しています。

日帰り手術としてのLEEPの実際1

日帰り手術としてのLEEPの実際2

日帰り手術としてのLEEPの実際3
レーザー法とLEEP法を始めた頃の比較ですが、レーザー法よりLEEP法の方が手術時間が短く、術後歩行開始時間も早く、術後経過も良好となっています。
お年寄りのLEEP法の特徴としてSCjunction(扁平円柱上皮境界)が奥まっていて、若い人は表面にあるのでさっと取れるからいいのですが、お年寄りの場合は一度のリープでは十分取れていないケースも多いので、2度目を小さいループで追加切除をしています。
気をつけなければいけないのが筋腫合併のLEEP法であり、子宮頸部の可動性が悪い症例は止血に手間取る可能性があり注意が必要です。

外来でのサージトロンの使用経験

外来で行っているサージトロン手技は骨盤底臓器脱に対するTFS手術後の癒着剥離とポリープ切除です。

骨盤臓器脱(TFS)手術後膣壁前後癒着症例に対するサージトロンの使用経験として、65歳の4回経産婦に対して骨盤臓器脱(TFS)手術、その後膣壁前後癒着があり、子宮内膜細胞診が出来なくなり、外来でサージトロンデュアルのCUTモード25にて膣壁前後癒着剥離手術施行しました。出血は無く、浸潤麻酔のみ使用しました。
もちろん膣壁の癒着に対して糸で縛って切除という選択肢も当然あるのですが、サージトロンで止血して切断するとキレイに頸管が出て来て、糸で縛るほどではなく、このような使い方もあるということを報告致します。
脱の手術後前後膣壁癒着
次に膣の間、子宮頸部にできるポリープですが、以前は外来でバイポーラで焼いていた時もあったのですが、今はサージトロンを使い切除しています。
また、切開して縫うほどでもない症例に関してはボール電極で止血をすることもあります。

外陰部や頸管にあるコンジローマは病変に併せたループ電極で切除、ボール電極で止血を行っています。組織に対する進達度が少なく使い勝手の良さを実感しています。

また、先程述べたようにLEEP法の副作用としての頸管狭窄が問題であり、通常狭窄を防ぐために6Frネラトンチューブを入れたりしていますが、若い人ほど太くなければすぐに落ちてしまう可能性があり、高齢者では太いものは入らないため、年齢によってサイズを変える必要があります。
これはLEEP法だけではなく、一般的な円錐切除の副作用とも言えることであり、基本的には狭窄を予防するためにネラトンチューブを3~5日程度留置するようにしています。

まとめ

腹腔鏡下手術やサージトロンによる手術は、短期滞在型医療・日帰り手術と言ったその時代の潮流にのって,医療を変えて行きました。サージトロンやラパロ機器の出現は、患者さんのための医療に良い機器が必須であることを強く印象づけました。

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※元資料に基づき、敬称略にて表示しています。
 
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